カラオケ採点システムやボーカルトレーナーの現場指導において、「前前前世」のカラオケ難易度は5段階評価中「難易度4(上級手前)」と判定されるケースが通例です。その主たる要因は、音域の絶対的な広さではなく、テンポ(BPM190)と音数の密集度にあります。
野田洋次郎氏が生み出すメロディの真骨頂は、日本語の持つ固有のリズムをロックの8ビート・16ビートに完璧にシンクロさせる言葉の詰め込み(フロウ)にあります。4分の4拍子・BPM190というスピードの中で、休符(ブレスが吸える隙間)がコンマ数秒しか用意されていません。息継ぎのタイミングをミリ秒単位で設計しておかなければ、サビの後半で確実に酸素不足に陥り、ピッチコントロールが崩壊します。
当時のインタビューや特番ドキュメンタリーで野田氏本人が「新海監督から何度もリテイクを受け、映像の疾走感とシンクロするまで極限まで言葉を研ぎ澄ませた」と証言している通り、この楽曲は聴く者を一気に引き込む推進力と引き換えに、歌唱者に対して極めて過酷な心肺機能と構音(滑舌)の俊敏性を要求する仕立てとなっているのです。