中野英雄のキャリアを語るうえで欠かせないのが、10代の頃の破天荒なエピソードです。東京・下町で血気盛んな青春時代を過ごし、当時の暴走族シーンでもその名を知られる存在でした。そんな彼が芸能界へ足を踏み入れる直接の契機となったのが、当時ストリートパフォーマンス集団のリーダー格として圧倒的なカリスマ性を放っていた哀川翔との路上での遭遇です。
当時のインタビューや回顧録によると、東京・原宿の路上で中野が哀川に突っかかったものの、喧嘩で完膚なきまでに叩きのめされたことが二人の始まりでした。その圧倒的な強さと男気に心服した中野は、哀川の「付き人」となることを直訴。1980年代を象徴するパフォーマンス軍団「劇男一世風靡」の現場に飛び込み、過酷な下積み時代をスタートさせました。
「挨拶や礼儀、上下関係の厳しさはすべて翔さんから叩き込まれた」と本人が述懐するように、劇男一世風靡での鍛錬は、中野英雄という表現者の基礎体力を徹底的に作り上げました。路上でのパフォーマンスや裏方作業を愚直にこなすなかで、男臭さと不器用な誠実さを兼ね備えた独特の役者としての個性が磨かれていったのです。