新潮文庫版の累計部数が数十万部を超え、今なお「絶対に読むべきノンフィクション」として挙げられる『殺人犯はそこにいる』。その骨子となるのは、1979年から1996年にかけて、栃木県足利市と群馬県太田市のわずか半径10キロメートル圏内で発生した「5人の幼女誘拐・殺害事件(北関東連続幼女誘拐殺人事件)」の追跡記録です。
当時、日本テレビ報道局の記者であった清水潔氏は、1990年に足利市で起きた「松田真実ちゃん事件(足利事件)」で無期懲役が確定し服役していた菅家利和さんの無実を直感します。警察が誇らしげに掲げた「最新のDNA型鑑定」の矛盾を突き、現地での徹底的な足を使った聞き込みと科学的検証を重ねた結果、清水氏は「真犯人は別にいる」という確信に至りました。
その後、2009年のDNA再鑑定によって菅家さんの無罪が明白となり、釈放・再審無罪判決が下されます。しかし、真の戦いはそこからでした。菅家さんを犯人に仕立て上げたことで、真犯人は野放しにされ、その後に発生した1996年の「横山ゆかりちゃん誘拐事件」を招いてしまったという冷厳な事実です。清水氏は、パチンコ店の防犯カメラに記録された不審者の映像を徹底解析し、特徴的な「ガニ股歩き」や被害女児への接触手口から、地元に住むある男を特定。取材班自ら男が捨てた吸い殻を採取し、民間機関でのDNA型鑑定に踏み切ったのです。