「生活保護受給者は特別養護老人ホーム(特養)に入所できないのではないか」という不安の声が頻繁に聞かれますが、これは明白な誤解です。実際には、生活保護受給者であっても特養への入所は法的に完全に認められています。それどころか、身元引受人がいない身寄りなしの高齢者や、在宅維持が困難な困窮者の場合、優先入所選考の配慮事項として考慮されるケースすらあります。
しかし、そこには一般にはあまり解説されない「施設種別の制約」と「生活費の減額」という重大な盲点が潜んでいます。
盲点1:民間有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のハードル
特養や介護老人保健施設(老健)といった公的施設であれば、食費や居住費に関して「特定入所者介護サービス費(補足給付)」の第1段階が適用され、自己負担上限が極めて低く設定されるため、生活保護費の範囲内で完全に収まります。一方で、民間の有料老人ホームやサ高住は、家賃が自治体の「住宅扶助上限額(地域により異なるが概ね月額4万〜5万数千円程度)」を大幅に超えるケースがほとんどです。生活保護基準を超える高額な家賃や管理費を請求する民間施設には、原則として入所できません。
盲点2:特養入所後に手元に残る「生活扶助」の減額改定
特養への入所が決定すると、自宅で暮らしていた頃に支給されていた食費や光熱水費相当の生活扶助費は支給されなくなります。施設側で食事や住まいが提供されるためです。その代わりに支給されるのは「施設入所者用の生活扶助(基準額)」となり、手元に残る現金は月額2万5,000円前後の日常生活費(小遣い銭)のみとなります。この金額から日用品、嗜好品、医療機関への移送費などをやりくりする必要があるため、「特養に入れば生活が豊かになる」わけではない現実に直面することになります。