2016年4月1日、当時所属していた事務所「ムーン・ザ・チャイルド」の公式ブログにおいて、吉田里琴は芸能界からの引退を突如発表しました。当時16歳、高校2年生に進級するタイミングでした。
引退発表の文面には「学業に専念するため」と記されていましたが、ネット上では「突然すぎる」「何か言えないトラブルがあったのではないか」と憶測が飛び交いました。しかし、後に本人がテレビ番組『A-Studio』や雑誌のロングインタビューで告白した一次証言を紐解くと、そこには極めて人間的かつ必然的な動機が存在していました。
3歳で芸能界入りした彼女は、物心ついたときには常に台本とカメラに囲まれた日常を送っていました。平日も撮影現場と学校を往復し、修学旅行や放課後の買い食いといった「普通の同世代が当たり前に経験すること」をすべて犠牲にする日々。本人は当時の心境について「一度芸能界を離れて、普通の女の子としての人生を経験してみたいという思いが限界に達していた」と明かしています。
引退直後、彼女が真っ先に始めたのはベーカリーショップ(パン屋)でのアルバイトでした。時給制の仕事で自らレジに立ち、接客を行い、友人とプリクラを撮る。この「普通の高校生」としての日常を取り戻した1年間のモラトリアム期間こそが、彼女の精神的バウンダリー(自他境界)を再構築する上で決定的な役割を果たしました。