フランシス・フォード・コッポラ監督の不朽の名作『ゴッドファーザー』。主人公ヴィト・コルレオーネは、高潔さと家族愛を重んじる魅力的なボスとして描かれています。映画のモデルには、実在の大ボスであるカルロ・ガンビーノやジョー・ボナンノ、そして政治的黒幕として知られたフランク・コステロの要素が色濃く反映されています。
しかし、実際の現場を取材してきた犯罪ジャーナリストや捜査当局の記録が示すのは、映画のような優雅な騎士道精神とは程遠い、冷酷な搾取の現実です。
フィクションでは「麻薬取引には手を出さない昔気質のボス」という美学が強調されがちですが、現実の五大ファミリーは莫大な利益を求めてヘロインやコカインの密売に深く関与していました。また、「家族を守る」という大義名分の裏で、身内の裏切りを疑えば親兄弟であろうと容赦なく粛清する凄惨な内部抗争が日常茶飯事でした。マフィアのロマンティシズムは、映画産業が生み出した魅力的な幻影に過ぎません。