家庭で天ぷらを揚げる際、もっとも頻発するトラブルが「衣が油っぽくべちゃつく」現象です。この失敗を引き起こす最大の原因は、小麦粉に含まれる2種類のタンパク質、「グリアジン」と「グルテニン」が水分と結合して生じるグルテンの過剰な生成にあります。
グルテンは強い粘り気と弾力を持つ網目構造を形成します。この網目が衣の中に張り巡らされると、衣内部の水分が揚げ油の中でスムーズに外へ蒸発できなくなります。逃げ場を失った水分が衣の中に閉じ込められ、内部でタネが蒸された状態になり、結果として油を吸ったスポンジのような重たい仕上がりになってしまうのです。
グルテンの生成は「常温(20℃以上)」および「物理的にかき混ぜる力」によって爆発的に活性化します。粉を水にしっかり溶かそうと泡立て器で何度も混ぜたり、ぬるい水を使ったりする行為は、科学的に見れば自ら粘り気を作り出しているようなものです。
また、揚げる食材自体の表面に余分な水分が残っている場合も、油の温度を急激に下げ、衣の内側から水分が染み出して衣をふやかしてしまう致命的なミスにつながります。