現在、生徒や指導者の多くがYouTubeなどの動画共有サービスで音源動画を視聴し、自習や練習に活用しています。耳から曲のイメージを掴む上では極めて有用なツールですが、指導現場の取材からは「ネット音源の盲信による弊害」も指摘されています。
ネット上の優秀校の模範演奏は、卓越した声量と熟練したパートバランスの上に成り立っています。それをそのまま真似ようとして「最初から大声で怒鳴るように歌ってしまう」「過剰なビブラートを真似て音程が迷子になる」というケースが頻発しています。結果として合唱祭の本番で後半にスタミナ切れを起こし、一番聴かせたい大サビで声がかすれてしまうのです。
本番で結果を出すクラスは、音源の「表現」を真似るのではなく、楽譜に書かれた強弱記号(p、mf、f)や発想標語、ブレス記号の意図をクラス全員で議論・共有しています。「なぜここでmp(やや弱く)になるのか?」「この休符にはどんな心情が込められているのか?」を話し合った学級は、たとえ個々の声量が控えめであっても、聴く人の心にダイレクトに刺さる一体感を生み出すことができます。