桂ざこばさんを語る上で欠かせないのが、関西発の国民的番組『探偵!ナイトスクープ』での名物顧問としての姿です。感動的な依頼VTRが流れると、誰よりも早くハンカチを目に当て、号泣しながら「ええ話やなあ…」と声を震わせるざこばさんの姿は、関西人のみならず全国の視聴者の記憶に刻まれています。
バラエティ番組で見せる怒りっぽくも涙もろいキャラクターは、作られた演出ではなく、ざこばさんの素顔そのものでした。不正や弱者への理不尽には激しい義憤を露わにし、温かい人情話には心底から共鳴する。その喜怒哀楽の激しさは、落語の登場人物である「喜六」や「清八」、長屋の住人たちを演じる際の圧倒的なリアリティへと昇華されていました。
そうした人間味の極致が現れたのが、2024年4月30日、動楽亭で行われた「最後の高座」でした。演目は博打を題材にした古典落語『看板のピン』。舞台袖から弟子に支えられながら高座に上がったざこばさんは、座布団に座った瞬間、眼光を鋭く変化させました。身体の衰えから滑舌は全盛期通りとはいかなかったものの、絶妙な間と豊かな表情、客席を包み込むような温かみのある声で満員の客席から爆笑と惜しみない拍手をさらいました。終演後、現場に居合わせた観客からは「言葉を超えた芸の凄みを感じた」「あれが本物の芸人の命の燃やし方だ」といった声がSNSに溢れました。