発語がない状態に直面したとき、多くの親が最も懸念するのが自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとする神経発達症との関連です。小児精神神経医学の知見において、単に「言葉が出ないこと」そのもの以上に重視されるのは、非言語コミュニケーション(身振り・視線・表情)の質と相互性です。
特に重要な鑑別ポイントとなるのが、2歳発語なし指差しクレーン現象の出現状況です。通常、定型発達の幼児は1歳半から2歳にかけて、他者と関心を共有するための高度な「指差し」を発達させます。
対照的に、自閉スペクトラム症の特性を持つ幼児に見られやすいのがクレーン現象です。これは、親や大人の手をまるで「道具」のように引っ張り、自分の手の代わりに使って欲しい物(届かないおもちゃや冷蔵庫の取っ手など)を指し示したり取らせたりする行動を指します。相手の目を見ず、手首だけを無言で掴んで動かす行動が頻繁に見られる場合、他者を「心を持ったコミュニケーションの相手」ではなく「目的を達成する手段」として認識している可能性が疑われます。
さらに、2歳発語なし自閉症の特徴として臨床現場でチェックされる代表的な行動指標は以下の通りです。
- アイコンタクトの質:名前を呼んでも目が合いにくい、あるいは視線が合ってもすぐに逸らす。
- 共同注視(ジョイントアテンション):大人が指差した方向を目で追わない、自分が興味を持った対象を「見て」と親に見せに来ない。
- 模倣の困難さ:バイバイやパチパチ、大人のしぐさを真似する「ごっこ遊び」の広がりが見られない。
- 感覚過敏と常同行動:特定の音や肌触りを異常に嫌がる、ミニカーのタイヤを延々と回し続ける、部屋の隅を往復するなど特定のパターンに固執する。