料理批評家のアントン・イーゴ。冷徹で、死神のような風貌を持つ彼は、一見すると物語のラスボスだ。しかし、彼がレミーの作った「ラタトゥイユ」を一口食べた瞬間に見せる表情の変化は、映画史に残る名シーンである。
イーゴが最後に執筆する劇評は、クリエイターや表現者に対する最大の賛辞であり、同時に批評家としての自己否定と再生の宣言でもある。「誰もが素晴らしい芸術家になれるわけではない。しかし、素晴らしい芸術家は、どこからでも現れ得る」。この言葉は、情報が溢れ返り、誰もが手軽に他者を批評できるようになった現代のネット社会において、より重い意味を持つようになった。