津山が「牛肉の聖地」と呼ばれる背景には、江戸時代から脈々と受け継がれてきた深い歴史があります。かつて仏教の教えにより肉食が禁じられていた時代、津山藩は全国でも極めて稀な「養生喰い(薬喰い)」が許された地域でした。滋養強壮の薬として牛肉を食べることが公式に認められていたのです。
さらに津山は、古くから牛馬の流通拠点(牛馬市)として栄え、質の高い牛が集まる地の利がありました。明治以降も食肉処理の技術が高度に磨かれ、職人たちは牛一頭を頭から尻尾、内臓、骨の隅々まで無駄なく使い切る精緻な解体技術を確立します。
「骨のキワにこそ最も旨い肉が残る」という職人の知恵と命への敬意から誕生したのがそずり肉です。干し肉やヨメナカセ(大動脈)、チギモ(脾臓)といった独自の肉文化とともに、そずり肉は津山の歴史が生んだ究極の知恵の結晶と言えます。