アイリッシュが組織の規律を無視してまで単独行動に走った根底には、組織の処刑人であるジンに対する激しい憎悪と確執がありました。そしてその引き金となったのが、かつて組織の重鎮であったピスコ(枡山憲三)の死です。
ピスコは『黒ずくめの組織との再会』において、暗殺任務の現場をカメラマンにスクープ撮影された失態を理由に、ボスの命を受けたジンによって口封じのために頭部を撃ち抜かれて粛清されました。しかし、組織の冷徹な掟の裏で、アイリッシュにとってピスコは単なる上司ではなく、「まるで父親のように自分に目をかけ、育ててくれた大恩人」だったのです。
ピスコを情け容赦なく射殺したジンに対し、アイリッシュは激しい復讐心を燃やし続けていました。しかし、組織のトップであるボスの絶対的な信頼を得ているジンを力づくで殺害しても、組織を裏切った反逆者として自分が始末されるだけに過ぎません。そこでアイリッシュが企てたのが、「ジンをボスの前で社会的に失脚させる」という策略でした。
かつてジンは、トロピカルランドで工藤新一に試作段階の毒薬「APTX4869」を飲ませ、「組織の完全犯罪として新一を死亡させた」とボスに虚偽(ジン自身は死亡したと確信していた)の報告をあげていました。もし「工藤新一が生きて小学生の姿で活動している」という動かぬ生きた証拠をボスの前に引きずり出せば、ジンの大失態と虚偽報告が白日の下に晒され、ボスの手によってジンが確実に処刑・失脚へと追い込まれることになります。
アイリッシュがコナンを生け捕りにして組織のボスへ直接差し出そうとしたのは、愛する恩師ピスコを無残に葬ったジンへの最大の意趣返しを果たすためだったのです。