かつては「手抜き調理」と冷笑される向きもあった種ごと調理ですが、2020年代半ばを迎えた現在のSNSやレシピプラットフォームでは、劇的なパラダイムシフトが起きています。X(旧Twitter)やYouTube、クラシルなどの料理コミュニティにおけるピーマンの種を食べるネットの反応を定点観測すると、圧倒的多数の共感と驚きが広がっていることが分かります。
「今まであの飛び散る種を一粒ずつ水で流していた苦労は何だったのか」「ゴミが一切出ないから三角コーナーが臭わない」「種がプチプチして食感のアクセントになり、むしろ種なしピーマンが物足りなくなった」といった、タイパ(タイムパフォーマンス)とフードロス削減を称賛するリアルな声が連日投稿されています。
一方で、家庭内の世代間ギャップや食習慣の違いに起因する摩擦も観察されます。ある40代主婦のSNS投稿では、「夫の実家から教わった丸ごとピーマンの煮浸しを食卓に出したら、実母から『手抜きもいい加減にしなさい、種くらい取りなさい』と激怒された」という手記がバズを生み、数千件のリプライが寄せられました。昭和の専業主婦家庭で叩き込まれた「丁寧な暮らし・丁寧な下処理」という規範意識と、共働き時代における「合理的で高栄養な時短料理」という新常識がぶつかり合う象徴的な事例です。
現代の食卓調査が示す現場のリアルは、「家族の好みに合わせて柔軟に選ぶ」というスタンスの定着です。青椒肉絲(チンジャオロースー)のような繊細な舌触りを求める本格中華では種を取り、煮込み料理やグリル料理では豪快に丸ごと使う――このハイブリッドな使い分けが、料理にストレスを抱えない現代人の知恵となっています。