ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「自分から自首すれば逮捕されずに済む」「自首すれば前科がつかない」といった根拠のない情報が散見されます。しかし、刑事弁護を数多く手がける実務家の見解や警察関係者の証言を総合すると、現実ははるかに厳しい手続きが待っています。
まず押さえるべきは、自首しても逮捕される理由と真相です。刑事訴訟法上、被疑者を逮捕する要件は「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」に加え、「逃亡の恐れ」または「罪証隠滅(証拠隠滅)の恐れ」が認められることです。自分から警察署に出向いたという事実は「逃亡の恐れがない」と判断される有利な材料にはなりますが、以下の条件に該当する場合は自首直後に通常逮捕、あるいは緊急逮捕されるケースが極めて多く見られます。
- 殺人、強盗、不同意性交、放火などの重大事件:罪名そのものが重く、長期の実刑が予想される事件では、自首した場合であっても逃亡・自殺の危険が否定できないとして即座に身柄が拘束されます。
- 共犯者が存在する事件:詐欺グループや共謀による傷害など、共犯者がまだ逃亡している場合は、携帯電話を通じた連絡や口裏合わせなどの証拠隠滅を防ぐため、逮捕状が執行されます。
- 被害者への接触リスクが高い事件:ストーカー事案や家庭内暴力(DV)、面識のある間柄での脅迫事案などは、再犯や被害者への危害を防ぐ目的で身柄拘束が優先されます。
逮捕された場合、出頭後の取り調べと身柄拘束の流れは通常の事件とまったく同様に進行します。警察署での手続き開始から48時間以内に被疑者の身柄と調書が検察庁へ送致され、検察官はそこから24時間以内に裁判所へ勾留請求を行うかどうかを判断します。裁判官が勾留を認めれば、原則10日間(延長されれば最大20日間)にわたって警察署の留置場から出ることができません。つまり、「自首したからその日に家に帰れる」という甘い見通しは、軽微な器物損壊や万引きなどの一部例外を除いて通用しないのが実情です。