彼の演技の原点を辿ると、必ず「言葉」への深い敬意と執着に行き着く。早稲田大学在学中に劇団「東京オレンジ」の看板俳優として活躍していた時代から、彼のセリフ回しの美しさと滑舌の鋭さは群を抜いていた。
単にセリフを暗記するのではない。脚本に書かれた言葉の一つひとつが「なぜその語順で発せられるのか」を徹底的に読み解く。まるで古文書を解読するかのような情熱をもってテキストに向き合う姿勢こそが、どんなに現実離れした役柄であっても揺るぎない説得力を与える根源なのだ。膨大なセリフを叩き込んだ末に生まれる自由な表現力は、徹底した準備という地味な作業の賜物である。