長年、将棋ファンだけの「知る人ぞ知る巨人」だった加藤一二三という存在を、お茶の間のヒーローへと押し上げたのはバラエティ番組『アウト×デラックス』での活躍だった。
歯に衣着せぬ独特の語り口と、前歯がない状態で魅せる無邪気な笑顔。マツコ・デラックスをはじめとする共演者たちとの絶妙な掛け合いは、瞬く間に全国の視聴者を虜にした。「ひふみん」の愛称は広まり、若者世代にとっても親しみやすいキャラクターとして定着していく。
だが、メディアが見せたのは彼の多面的な魅力の一端に過ぎない。バラエティで見せる柔らかい表情の奥には、常に将棋盤を見つめ続けた厳格な勝負師の眼光が潜んでいた。ネットコミュニティは、テレビが切り取った可愛らしさと、棋士としての圧倒的な格調高さのギャップを敏感に察知し、それを独自の文脈でエンターテインメントへと昇華させていったのだ。