熊本県阿蘇市一の宮町坂梨のカルデラ東壁に位置する古閑の滝は、性格の異なる2つの滝が隣接して流れ落ちる独特の景観を持っています。向かって左側に位置する「男滝」は落差約80メートルで、垂直に近い切り立った岩壁を一気に流れ落ちる力強さが持ち味です。一方、右側の「女滝」は落差約100メートルにおよび、しなやかに岩肌を滑り落ちる優美な佇まいを見せます。
厳冬期を迎えると、カルデラ底である阿蘇谷から吹き上げる強烈な冷風が滝壺から立ち上る水しぶきを瞬時に氷結させます。この現象によって岩肌全体に広がるのが、まるで白い花が咲き乱れたかのような「氷の華(しぶき氷)」です。阿蘇市観光協会の記録や現地調査データによると、最も冷え込んだ朝には水流全体が完全凍結し、空に向かってそびえ立つ白銀の巨塔のような姿を現します。
南国・九州のイメージを覆すこの極寒の芸術は、阿蘇カルデラ特有の標高約600メートルという高地気候と、谷底から吹き抜ける局地風という地理的条件が奇跡的に合致して初めて成立する景観です。