「火の立ち上がり、そしてタレを回し入れるコンマ一秒のタイミング。すべてが噛み合った時だけ、最高のコクが生まれるんです」
厨房で巨大な中華鍋を豪快に振るうシェフは、そう熱く語る。かつて伝説の料理人として中華界に君臨した周富徳氏の教えを現場で体現し、伝統的な四川料理の技法を徹底的に叩き込まれた実力派だ。しかし、彼の真骨頂は単なる本場再現にとどまらない。
隠し味に使われているのは、なんと数種類の国産昆布と鶏ガラから丁寧に引いた濃厚な一番出汁。四川の力強いスパイスと和の旨味成分が交差することで、重厚でありながら後味は極めて軽やかという、比類なき秘伝の味付けが完成するのだ。