事件以降、アニメ業界には奇妙な「ジンクス」が生まれた。作画のクオリティを証明するためのリトマス試験紙として、劇中に「キャベツを包丁で切るシーン」があえて組み込まれるようになったのだ。各スタジオは、葉の一枚一枚のリアルな質感や包丁が通る断面の精密なアニメーションに並々ならぬ情熱を注ぐようになる。
『ひだまりスケッチ』や『この素晴らしい世界に祝福を!』など、後続のヒット作で見られた緻密な調理シーンは、視聴者に対する自社の作画力の強烈なアピールとなった。一つの失敗がトラウマとなり、結果としてアニメ表現全体の底上げを推進する原動力となったのは、なんとも皮肉で興味深い現象と言える。