この現象の源流を探ると、2000年代初頭にリリースされた男性向けアダルトビデオ『真夏の夜の淫夢』に行き着く。作中に登場するある出演者が、ネット上において「野獣先輩」という通称で呼ばれるようになったことがすべての始まりだった。
当時の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)やアングラ掲示板では、特定のフレーズや画面キャプチャを切り出して楽しむアングラ文化が花開いていた。特有の表情や独特のセリフ回しは、またたく間にスクショされ、パロディの素材として消費され始める。画像コラージュの技術を持つユーザーたちがこぞってネタ画像を投稿し、元の文脈を完全に脱色した新しい「素材」としての認知が拡大していった。
生身の人間でありながら、実像や正体が一切不明であるというミステリアスな要素も火に油を注いだ。人物のプライベートが謎に包まれているからこそ、無色透明なキャンバスのようにあらゆる文脈へ移植しやすかったのだ。