新宿エリアにおける三越と伊勢丹の歴史を語る上で欠かせないのが、かつて新宿通りに威容を誇っていた「新宿三越」の足跡です。多くの消費者が記憶する「新宿三越本館」や、のちのファッションビル型商業施設「新宿三越アルコット」の営業終了には、三越伊勢丹統合に伴う明確な経営戦略が存在していました。
新宿三越の閉店理由と経緯を振り返ると、2008年の三越と伊勢丹の経営統合が大きな転換点となりました。至近距離に位置する三越と伊勢丹で同質的な百貨店営業を続けることは、グループ内でのカニバリゼーション(共食い)を招くリスクがありました。そこで経営陣が下した決断が、「百貨店機能は圧倒的な集客力を誇る伊勢丹新宿店に集約し、三越拠点は不動産賃貸事業へシフトさせる」という戦略的スクラップ&ビルドです。
2012年に三越アルコットが営業を終了した後は、大型テナントビルとして再生され(かつてのビックロ、現ビックカメラ新宿東口店など)、グループに安定した賃貸収入をもたらす不動産ポートフォリオへと変貌を遂げました。このドラスティックな経営資源の集中こそが、伊勢丹新宿店を「世界屈指のメガフラッグシップ」へと昇華させる原動力となったのです。