ディアマンクッキーを口に運んだ瞬間の、あの軽快な歯ざわり。ディアマンクッキーがサクサクになる理由には、製菓科学に基づいた明確なメカニズムが存在します。
最大の鍵は、小麦粉に含まれるタンパク質(グリアジンとグルテニン)が水分と結びついて網目状の弾力組織を作る「グルテンの形成」を徹底的に遮断していることです。グルテンが過剰に発達すると、パンやうどんのようなモチモチ感や、固いクッキー特有のガリッとした重たい歯ごたえになってしまいます。ディアマンクッキーでは、粉を入れた後の混ぜ方を最小限に抑え、練らずに「切るように」合わせることで、グルテンの発生を限界まで抑制します。
さらにプロの現場では、製法の選択によって食感のグラデーションをコントロールしています。 室温で柔らかくしたポマード状のバターに砂糖をすり混ぜて空気を抱き込ませる「クレメ法」を採用すると、空気の気泡が熱で膨張し、軽やかでサクサクとした仕上がりになります。一方で、冷たく固いバターと粉を細かく切り刻みながら砂状にする「サブラージュ法」を用いると、粉の粒子ひとつひとつがバターの油脂膜でコーティングされ、グルテンの発生が完全に遮断された「極上のホロホロ食感」が生み出されます。
そして、味わいの骨格を決定づけるのが発酵バターと無塩バターの違いです。 一般的な無塩バター(非発酵)がフレッシュで素直なミルクの甘みと軽快な後味をもたらすのに対し、原料となるクリームを生菌で発酵させた「発酵バター」は、特有の芳醇なアロマと微かな酸味、豊かなコク(ジアセチルなどの香気成分)を含んでいます。ディアマンクッキーのように副材料が少ない焼き菓子では、発酵バターを使用することで、焼き上がりの香りの立ち上がりと余韻の深さが格段に跳ね上がります。