2012年8月20日、シリア最大の都市アレッポの「スレイマン・アル=ハラビー地区」で事件は起きた。反体制派勢力の取材を行っていた山本美香氏と佐藤和孝氏は、突然現れた迷彩服姿の兵士たちと遭遇した。直後、至近距離から一方的な激しい射撃が浴びせられる。山本氏は頸部などを撃ち抜かれ、その場に倒れ込んだ。佐藤氏が必死の救助を試みたものの、現地の病院に運び込まれた時にはすでに心肺停止の状態であった。
銃撃戦が続く危険地帯からの遺体搬送は、一刻を争う絶望的な作業だった。佐藤氏は現地の救急車両や有志の手を借り、砲撃が飛び交う道路を潜り抜けながら隣国トルコへの国境を目指した。トルコ南部のキリス県の病院へ身元確認のため到着すると、外務省の現地担当者や大使館職員が即座に対応にあたった。無言の帰国を果たした際、羽田空港に到着したその姿は、あまりにも過酷な戦場報道の現実を物語っていた。