最終回において、レゴシとハルの関係以上に読者に強い衝撃と哀愁を与えたのが、ルイとジュノのその後の結末です。演劇部時代から種族の壁を超えて惹かれ合い、不器用ながらも心を寄せ合っていた2人の恋路は、極めてビターで現実的な幕切れを迎えました。
財閥「ツノグループ」の御曹司であるルイは、草食獣のエリートとしての社会的責任、そして亡き養父・オグマの遺志を継ぐ道を選びます。それは、親が決めた許嫁であるアカシカのアズキとの政略結婚を受け入れることを意味していました。
一方、ルイへの想いを抱き続けていたオオカミのジュノは、駅のホームでルイと最後の対峙を果たします。ジュノはルイの背負う重荷を誰よりも理解しており、ルイもまた、ジュノの前で見せる無防備な自分こそが「真実の自分」であることを自覚していました。しかし、ルイは自らの社会的義務を捨てることはできず、ジュノもまた、肉食獣としての誇りを捨ててルイの愛人になるような道は望みませんでした。
列車が発車する間際、2人は最初で最後の情熱的なキスを交わします。「私を思い出して一生後悔しなさい!」と言い放ち、美しく前を向いて去っていくジュノの後姿は、読者の涙を誘いました。この結末に対しては「なぜルイとジュノを結びつけてくれなかったのか」という悲鳴にも似た声がSNS上で溢れ返りましたが、後述する社会学的視点から見れば、本作が掲げた「リアリズム」の極致であったと言えます。