なぜこの一連の言葉は、これほどまでに人間を惹きつけてやまないのでしょうか。「危ぶむなかれ危ぶめば道はなし」「踏み出せばその一足が道となり」という修辞には、現代の行動科学や心理学の知見に照らし合わせても極めて理に適ったメカニズムが埋め込まれています。
人は未来への不確実性に直面した際、本能的にリスクを回避しようとする防衛本能が働きます。心理学において「分析麻痺(Analysis Paralysis)」と呼ばれる状態に陥ると、選択肢を比較検討するばかりで足が止まり、結果として何も成し遂げられないまま現状維持を強いられます。
「この道を行けばどうなるものか」と問う姿勢そのものが、机上の空論にとらわれた立ち止まりの状態を象徴しています。それに対し、「危ぶむなかれ、踏み出せばその一足が道となる」という教えは、「行動が先、動機や答えは後からついてくる」という認知行動療法の原則を突いています。
あらかじめ舗装された安全なレールを探そうとするから足が竦むのであり、未踏の荒野に足を下ろしたその接地痕こそが、後から振り返ったときに初めて「道」と呼ばれる。思考先行の現代社会において、この言葉は身体感覚を取り戻すための強烈な覚醒剤として機能しています。