高校数学までに学ぶ微分(常微分)と、大学数学で登場する偏微分の決定的な違いは、「入力として扱う変数の数(次元)」にあります。高校までの1変数関数 $y = f(x)$ では、入力 $x$ を少し動かしたときに、出力 $y$ がどれだけ変化するか(接線の傾き)を調べれば十分でした。数式では $\frac{dy}{dx}$ というおなじみの記号を用います。
これに対し、現実の現象を捉える多変数関数の微分では、変数が2つ以上存在します。例えば、ある地点の標高 $z$ が東西方向の位置 $x$ と南北方向の位置 $y$ によって決まる立体的な地形面 $z = f(x, y)$ を思い浮かべてください。この山肌に立っているとき、「傾きはいくらか?」と問われても、即答はできません。東を向いて進むのか、北を向いて進むのか、進む方角によって足元の傾斜はまったく異なるからです。
そこで編み出されたのが偏微分です。「南や北には一切動かず($y$ を固定)、真東に向かってだけ歩いたときの傾き」を調べるのが、$x$ による偏微分です。このとき、普通の微分記号「$d$」の代わりに使われるのが、独特の丸みを帯びた偏微分記号「∂」です。
教育現場や研究開発の最前線における偏微分記号ラウンドの読み方としては、「ラウンド(round)」「デル(del)」「パーシャル(partial)」などが広く定着しています。数式 $\frac{\partial z}{\partial x}$ は「ラウンドゼット・ラウンドエックス」や「パーシャルゼット・パーシャルエックス」と発音され、「この式には $x$ 以外の変数も潜んでいるが、今は $x$ だけに着目して微分している」という文脈を明確に伝達する役割を担っています。