妊娠線(医学用語:線状皮膚萎縮症・皮膚伸展線)は、皮膚の伸縮限界を超えて急激に引き伸ばされた際に生じる亀裂です。皮膚は外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造で成り立っていますが、柔軟性のある表皮に対し、真皮や皮下組織は急激な伸長に追従できません。皮膚の奥にある真皮のコラーゲンやエラスチン線維が断裂することで、毛細血管が透けて見え、赤紫色の筋となって現れます。
この妊娠線の原因には、物理的要因とホルモン的要因の2つが深く関与しています。第一に、妊娠中期以降の子宮拡大や皮下脂肪の蓄積による「物理的な急拡大」です。第二に、妊娠中に分泌が急増する「コルチコステロイド(副腎皮質ホルモン)」の影響です。このホルモンは皮膚の代謝を抑え、コラーゲンの生成を抑制する作用があるため、皮膚の柔軟性が低下し、わずかな力でも断裂が起きやすくなります。
なお、体重増加に伴って太ももや臀部にできる「肉割れ」と妊娠線は、発生の根本的な皮膚断裂メカニズムとしては同一のものです。しかし、妊娠線はホルモンバランスの激変が加わる点、そして短期間でお腹周囲が約20〜30cm近く急拡大するという極めて特殊な負荷がかかる点で、通常の肉割れよりも広範囲かつ深部に発生しやすい特徴を持ちます。