観光パンフレットの主役が海鮮であるならば、地元民の日常を支えているのは間違いなく小樽あんかけ焼そばだ。昭和初期、市内の大衆中華料理店から広まったとされるこの麺料理は、極寒の冬を乗り切る労働者たちの胃袋を温め続けてきた。
香ばしく焼き目をつけた太麺の上に、豚肉、エビ、イカ、キクラゲ、白菜がたっぷりと入った熱々の醤油ベースの餡が並々と注がれる。湯気とともに立ち上るごま油の香りに酢と練りからしを少しずつ溶かしながら食べ進めるのが小樽流だ。住宅街の路地裏や昔ながらの中華店に一歩足を踏み入れれば、観光客の姿はなく、昼休みの会社員や近所の常連客で席が埋め尽くされている。