テレビやネット配信を見ていて「2人そろって眼鏡をかけているあのコンビ」が誰なのか気になったとき、まず名前が挙がる代表格がおぎやはぎ(小木博明・矢作兼)です。1995年の結成当時、お笑い界では「コンビの双方が眼鏡をかけるとキャラクターが被って見分けがつかなくなる」というのが暗黙のタブーでした。しかし、プロダクション人力舎の先輩や関係者の証言によると、矢作兼が「2人ともメガネをかけてスーツを着たら、サラリーマンみたいで逆に新しくて面白いんじゃないか」と提案したことが、彼らの代名詞である「脱力系でおしゃれな漫才スタイル」の確立につながったと伝えられています。
平成から令和へと時代が進むにつれ、この2人ともメガネコンビというスタイルは、卓越した演技力や唯一無二の世界観を支える強固なフォーマットへと進化しました。コント界の絶対的実力派であるシソンヌ(じろう・長谷川忍)は、2006年の結成以来、長谷川がツッコミとして鋭く場を引き締め、じろうが変幻自在に憑依型のキャラクターを演じ分ける舞台装置として眼鏡を活用しています。長谷川の知的なフレームと、じろうがコントごとに掛け替える多種多様な眼鏡は、彼らの職人的なコントの解像度を極限まで引き上げる役割を果たしています。
また、上方漫才の正統派として劇場を沸かせる兄弟コンビ・ミキ(昴生・亜生)も外せません。2012年の結成当初から兄弟揃って眼鏡を愛用し、兄・昴生の甲高いツッコミと弟・亜生の愛嬌あふれるボケを視覚的に対比させつつ、どこか親しみやすい「街の兄弟」というパブリックイメージを強固に植え付けました。さらに、ピンクのドレスと眼鏡がトレードマークの阿佐ヶ谷姉妹(渡辺江里子・木村美穂)は、疑似姉妹ならではの圧倒的なシンクロニシティを眼鏡という共通項によって完成させています。彼女たちが見せる上品でほのぼのとした空気感は、フレームの奥にある優しい眼差しと絶妙に調和しています。