インターネットやSNS上では、鮮やかなショッキングピンクに加工された画像が拡散されることが多く、「今日の月はピンク色になる」と信じ込んでいる方が少なくありません。しかし、結論から申し上げますと、月そのものがピンク色に発光することはありません。この名称は視覚的な色合いを指したものではなく、古くからの文化的背景と天文学的な光学現象が絡み合って生まれたものです。
ストロベリームーンという名前の意味と由来は、北米の先住民族であるアルゴンキン族の伝統に遡ります。彼らは季節の移り変わりを把握するために毎月の満月に固有の呼び名をつけており、6月は野生のイチゴの収穫期であったことからこの名前が付けられました。ヨーロッパでは「ローズムーン」や「ハニームーン」とも呼ばれており、いずれも農作物や花の開花サイクルを基盤とした暦の知恵です。
一方で、「実際に地平線近くの月が赤や濃いオレンジ色に見えた」という体験談は決して嘘ではありません。これには、夕焼けが赤く染まる現象と同じ「レイリー散乱」という大気の物理的メカニズムが関係しています。光が大気層を通過する際、波長の短い青い光は途中で散乱して消えてしまいますが、波長の長い赤い光は大気を通り抜けて人間の目に届きます。特に月が地平線近くにある時間帯は、大気層を通過する距離が格段に長くなるため、月は赤褐色から赤みがかった琥珀色を帯びて見えるのです。