館内中央で圧倒的な存在感を放つのが、噂の「1億円トイレ」だ。ガラス越しに眺める優雅な日本庭園、惜しみなく使われた高級陶器の質感、そして空間全体を包み込むクラシックの旋律。便器の前に立つことすら一瞬ためらうほどの豪奢な仕立てに、訪れた人々は一様に目を丸くする。
福岡県田川郡大任町役場がかつて打ち出したこの「1億円トイレ整備プロジェクト」は、当初こそ税金の使い道として激しい議論を巻き起こした。しかし、旗振り役を務めた永原譲二(大任町長)の狙いは極めて明確だった。「薄暗くて汚い」という従来の公衆トイレの常識を徹底的に覆し、誰しもが立ち寄りたくなる圧倒的なランドマークを創り出すこと。結果としてその目論見は見事に結実し、今やこの空間そのものが全国区の強力な誘客コンテンツとして機能している。