神田古書店街の歴史を遡れば、明治の文豪たちに行き着く。かつて夏目漱石をはじめとする多くの作家や知識人がこの街をそぞろ歩き、洋書や貴重な古典籍を買い求めた。街の古書店主の一人は「漱石先生が手に取ったかもしれない初版本が、今も棚のどこかに眠っている」と誇らしげに語る。
言葉を編む人々の執念を描いた映画『舟を編む』の世界観そのままに、辞書専門の書店や学術書に特化した老舗が今も軒を連ねる。一方で、現代の物語消費は紙のページを飛び越えた。神保町を舞台にした小説や漫画が映像化され、Netflixなどの世界的な動画配信サービスを通じてグローバルに視聴される事例も増えている。
古い活字本が整然と並ぶ棚の横で、海外からの旅行者がスマートフォンを片手にロケ地巡りを楽しむ。100年以上前の活版印刷の香りと最先端のストリーミングコンテンツが同じ空間で違和感なく溶け合っているのが、この街の奥深さだ。