北朝鮮で反体制的な言動や脱北未遂の容疑をかけられた者が最初に送られるのが、国家保衛省(旧・国家安全保衛部)や社会安全省の取調べ施設です。ここで待っているのは、罪を自白させ体制への絶対服従を迫るための苛烈を極める拷問です。
国際機関の公聴会や生還者の手記において、最も多く語られる残虐な手口の一つが「鳩の拷問(ビドゥルギ拷問)」と呼ばれる拘束手法です。これは、両手を背後で壁や鉄格子に手錠で固定され、胸を前方に突き出された状態で空中に吊るされる、あるいは極度に中腰の姿勢を強要されるものです。立つことも座ることも許されず、数時間から数日間にわたってこの状態が続くと、胸骨の圧迫と関節の激痛によって呼吸困難に陥り、多くの収容者が意識を失うと報告されています。
脱北者たちの証言手記によれば、取調べ現場では以下のような多種多様な拷問が体系的に使い分けられています。
- 極限の体位強要:数十時間にわたり正座や中腰の姿勢を維持させ、わずかでも動けば木棒や鉄パイプで殴打される。
- 水責め・火責め:顔に布を被せて水を注ぎ込む窒息拷問や、熱した鉄や煙草を用いた火傷の強要。
- 睡眠剥奪と飢餓:数日間にわたって一切の睡眠を禁じ、一握りのトウモロコシ粉しか与えない極限状態での尋問。
- 厳冬期の冷水・凍傷拷問:氷点下20度を下回る厳冬期に冷水を浴びせかけ、暖房のない取調室に放置する。
証言者の一人は「肉体的な苦痛だけでなく、人間としての尊厳を完全に破壊されることが最も恐ろしい」と語っており、拷問が単なる捜査手法ではなく、個人の自由意志を根底から打ち砕くための「心理的破壊装置」として機能している実態が浮き彫りになっています。