結論から述べると、四字熟語「竜頭蛇尾」の正しい読み方は「りゅうとうだび」です。「りゅうずだび」「りょうとうだび」「りゅうとうへびお」「りゅうとうじゃび」などと読むのはすべて誤りです。
では、教養あるビジネスパーソンや大学生であっても、なぜ「りゅうずだび」と口走ってしまうのでしょうか。その最大の要因は、日常生活における「竜頭(りゅうず)」という単語の強力な刷り込みにあります。腕時計のゼンマイを巻き上げたり時刻を合わせたりする突起部品を「竜頭(りゅうず)」と呼ぶため、脳内で「竜頭=りゅうず」という自動変換が働いてしまうのです。また、寺院の梵鐘(ぼんしょう)の最上部にある龍をかたどった吊り手も「りゅうず」と読まれます。しかし、四字熟語として漢字が連なる場合、漢音の統一によって「竜(りゅう)」「頭(とう)」「蛇(だ)」「尾(び)」と読むのが唯一の正解となります。
言葉の持つ竜頭蛇尾の意味は、「初めは龍の頭のように勢いが極めて盛んであるが、終わりは蛇の細い尾のように振るわず、みすぼらしいこと」。着手時の壮大な熱量と、結末における貧相な結果との落差を皮肉や戒めを込めて描写する言葉です。
この表現の原点となった竜頭蛇尾の由来と語源は、中国・宋代(1125年頃)に圜悟克勤(えんごこくきん)が編纂した禅宗の代表的典籍『碧巌録(へきがんろく)』に遡ります。『碧巌録』第六則などの評唱において、高名な禅僧と修行僧が対峙する場面が描かれています。修行僧が雷鳴を轟かせる龍のような大喝とともに勇ましく名乗りを上げ、一見すると悟りを開いた大人物のように登場するものの、禅師から核心を突く鋭い問いを浴びせられた途端、返答に窮して正体を露呈し、みすぼらしい蛇の尾のように縮こまって逃げ出してしまう――。この修行僧の「見かけ倒しの振る舞い」を厳しく喝破した言葉が、後世に四字熟語として定着しました。