若隆景を語る上で欠かせないのが、名門・荒汐部屋を牽引する「大波三兄弟」の絆です。祖父に元小結の若葉山、父に元幕下の若信夫を持つ相撲一家に育った三兄弟は、長男が幕下の若隆元、次男が大関の若元春、そして三男が若隆景という希代の顔ぶれです。戦国武将・毛利元就の「三本の矢」の逸話にちなんで名付けられた四股名は、まさに彼らの結束を象徴しています。
荒汐部屋の稽古場では、大関となった次男・若元春との激しい申し合いが日常的に繰り広げられています。左四つの名手である若元春と、右四つ・おっつけを得意とする若隆景。タイプの異なる二人のハイレベルな攻防は、互いの技術を天井知らずに引き上げる相乗効果をもたらしています。また、長男の若隆元は裏方としても部屋全体と弟たちを精神的に支える重鎮であり、この三兄弟の心理的安全性が若隆景のリハビリ期間を力強く後押ししました。
家族でありながら最高峰のライバルであるというこの特殊な関係性は、集団力学の観点からも極めて健全なモチベーションを生み出しています。次男・若元春が大関昇進を果たした際、若隆景は悔しさを押し殺すことなく「兄の活躍は大きな刺激。自分も必ず同じ場所に並ぶ」と力強く宣言しました。お互いをリスペクトしながら高め合う血縁の絆が、荒汐部屋を今や角界屈指の人気・実力部屋へと押し上げた要因です。