タイトルの「虎に翼」は、中国の古典『韓非子』や『鬼谷子』に由来する故事成語です。本来は「ただでさえ強い力を持つ虎に翼が生えるように、さらに威力が加わること」を意味し、時には悪人が勢力を増す戒めとしても用いられます。
劇中では、恩師である穂高重親(小林薫)が女子部法科の学生たちに対し、「法律という最強の翼を身につけて羽ばたきなさい」と激励するポジティブな意味として提示されました。しかし物語が進むにつれ、その翼は時に自分や他者を傷つける刃にもなり得るという「法の両義性」を突きつける多層的な仕掛けとなっていたのです。
このテーマを完璧な音楽として結実させたのが、米津玄師による主題歌「さよーならまたいつか!」です。軽快なブラスサウンドと跳ねるようなリズムに乗せて歌われるのは、理不尽な世の中に抗いながら傷だらけで歩き続ける人々への祝福でした。特筆すべきは「しぐるるや しぐるる町へ 歩み入る」という種田山頭火の句を連想させるような文学的アプローチと、オープニング映像で見せた多様な女性たち(シスターフッド)が共に踊り歩むビジュアル表現です。毎朝この楽曲が流れるたび、視聴者は寅子とともに戦うエネルギーを受け取っていました。