なぜ、単なるキャッサバ澱粉のボールがこれほどの社会現象となり、専用の空間まで作られるに至ったのか。社会学的な観点から見れば、当時の若者たちが買い求めていたのはドリンクそのものではなく、「同じ体験を共有しているという安心感」だった。
2010年代後半、スマートフォンとSNSの浸透により、若者たちの間では「取り残されることへの恐れ(FOMO: Fear of Missing Out)」がかつてないほど強まっていた。流行のタピオカを手に持ち、SNSに投稿することは、仲間内で「私は今のトレンドにコミットしている」と表明するための最も手軽なパスポートだったのだ。あの空間は、そうしたデジタル上の居場所探しに苦心する若者たちの承認欲求をダイレクトにマネタイズした場所だったと言える。