映画『ONE PIECE FILM RED』におけるウタの歌唱プロジェクトは、日本の音楽シーンを牽引する名だたるトップクリエイター7組が1曲ずつ劇中歌を書き下ろすという前代未聞の試みでした。その中で劇中の転換点となる重要曲『私は最強』を託されたのが、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴でした。
オファーの経緯について、映画製作陣や原作者・尾田栄一郎氏が求めたのは「世界の歌姫として君臨するウタの圧倒的な華やかさと、聴く者すべての心を一瞬で掌握する劇薬のようなエネルギー」でした。当時フェーズ2を開幕させ、ポップネスとダイナミックなバンドサウンドを極限まで進化させていたミセスの音楽性こそが、新時代の歌姫の象徴に不可欠だと白羽の矢が立ったのです。
公式インタビューや制作ドキュメンタリーで明かされた証言によると、大森元貴はプロット段階でウタが背負う過酷な運命を深く読み込み、「Adoの歌声のポテンシャルを1ミリも余すことなく解放する」ことを目指してペンを執りました。大森自身が「Adoさんのボーカルレンジと表現力の広さがあるからこそ、一切の妥協なくキーや転調のハードルを引き上げられた」と回想している通り、提供曲でありながら極めて挑戦的な楽曲構成が練り上げられました。
ボーカルレコーディングに臨んだAdoは、大森から届いた仮歌の完成度に衝撃を受けたと語っています。繊細なウィスパーボイスから突き抜けるようなハイトーン、そして感情を叩きつけるようながなり声まで、大森元貴の緻密なボーカルディレクションとAdoの卓越した憑依型の歌唱技術が火花を散らした結果、邦楽史に刻まれる奇跡のテイクが誕生しました。