日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会をはじめとする専門医組織は、「基本的に日常的な耳掃除はほとんど必要ない」という見解を一貫して示しています。人間の外耳道には、鼓膜の表面から外側へと古い皮膚組織が角質とともに徐々に移動する、極めて精密な自浄作用(マイグレーション機能)が備わっているためです。
耳を健康に保つための正しい耳掃除の頻度とやり方は、世間のイメージとは大きく乖離しています。
- 適切な頻度:月1〜2回で十分。毎日行うのは粘膜を傷つける最大のNG行為。
- 掃除する範囲:耳の穴の入り口からわずか「1cm以内」の見える範囲のみ。それより奥には絶対に器具を入れない。
- 使用する道具:先端の硬い竹製耳かきは外耳道の内壁を削りやすいため避ける。細めの綿棒を使い、皮膚を擦り付けずに軽くなでるように回す。
- 入浴直後は避ける:皮膚が水分を含んでふやけている状態での掃除は、表皮を簡単に剥離させて外耳道炎の原因になるため、皮膚が乾いている時間帯に行う。
外耳道の奥半分は非常に薄い骨部皮膚で覆われており、知覚神経(迷走神経耳介枝)が張り巡らされています。奥を刺激すると激しい咳き込みや痛みを引き起こすだけでなく、鼓膜を誤って穿孔(穴を開ける)する事故に直結します。「奥をカリカリ掻くと気持ちいい」という快感は、神経刺激による錯覚に過ぎず、医学的には組織を自ら破壊している行為に他なりません。