アルツハイマー公表の有名人と現在|闘病の告白が変えた社会のリアル

アルツハイマー公表の有名人と現在|闘病の告白が変えた社会のリアル

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長年、芸能界や政界において「認知機能の低下」は致命的なキャリアの終焉を意味し、関係者によって徹底的に隠蔽されるのが常でした。その潮流を根底から覆したのが、1994年11月5日に公開されたロナルド・レーガン元米大統領の「告白の手紙」です。

「私は今、人生の日没へと向かう旅路を歩み始めています」という一節で締めくくられたこの手紙で、レーガン氏は自らがアルツハイマー病の初期段階にあることを世界に向けて明かしました。大統領退任から5年後、自身の記憶が薄れていく事実を隠すのではなく、「この手紙が国民の皆様の病気への理解を深め、患者やその家族に対する温かい支援につながることを願っています」と記したのです。この告白は全米を揺るがし、病気に対する恥の意識を一掃。結果として米国立衛生研究所(NIH)をはじめとする世界的な研究予算の大幅な増額を勝ち取る最大の推進力となりました。

日本国内において、そのバトンを受け継ぐかのように独自の境地を切り拓いたのがタレントの蛭子能収氏です。2020年7月に放送されたテレビ番組の専門医受診企画で認知症の確定診断を受けた蛭子氏は、診断結果を拒絶することなく、そのままありのままを公表する道を選びました。

テレビ関係者やマネージャーへの取材によれば、当初は仕事を失うことへの不安や、家族が世間の目に晒される懸念も当然存在したといいます。しかし、蛭子氏本人が「隠すのも面倒くさいし、怒られるよりは言っちゃったほうが楽」という、彼らしい脱力した受容の構えを見せたことが転機となりました。公表後の蛭子氏は、マネージャーや妻のサポートを受けながら、バラエティ番組やウェブメディア、自身のYouTubeチャンネルで活動を継続。ロケ中にスタッフの名前を忘れてしまう場面や、デイサービスで同年代の仲間と麻雀を打つ姿を一切の虚飾なく見せ続けました。

この「衰退をドラマチックに美化しない」姿勢は、ネット上でも「蛭子さんを見て肩の荷が下りた」「親の物忘れにイライラしていた自分が恥ずかしくなった」と強い共感を呼びました。著名人が自らの脆弱性を開示することは、社会全体に蔓延していた「完璧でなければならない」という呪縛を解きほぐす効能を持っています。

渡辺 美咲
著者

渡辺 美咲

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。