DIY情報が氾濫するWeb上には、賃貸住宅で重大な損害を招きかねない危険な誤解が放置されています。安全な運用のために、これら俗説の裏に潜むリスクを論理的に解明します。
第1の誤解は、「超強力魔法の両面テープを使えば穴を開けずに完全固定できる」という言説です。近年動画プラットフォーム等でバズを生んだアクリル系ゲルテープは、確かに素材同士を強烈に接着します。しかし、日本の賃貸住宅の内装壁の9割以上は塩化ビニール製の壁紙(ビニールクロス)で覆われています。テープ自体の粘着力がいかに高くとも、荷重に耐えきれなくなった壁紙の表面が裏紙から裏打ちごとベリベリと剥がれ落ち、結果として数万円単位のクロス張り替え費用を請求される事態に陥ります。重量物を支える目的で壁紙に粘着テープを使用するのは厳禁です。
第2の誤解は、「突っ張り棒方式なら天井のどこにでも設置して良い」という過信です。突っ張りジャッキは、上下方向に強い突っ張り圧(スプリングやネジの押し出し力)を発生させます。鉄骨造やRC造のコンクリート直天井であれば問題ありませんが、木造アパートや軽量鉄骨造の二重天井(吊り天井)の場合、天井裏に下地(野縁)が通っていない空洞部分を強く突っ張ると、石膏ボードが上へ押し上げられて天井が割れたり歪んだりする事故が発生します。支柱を立てる際は、必ず天井を軽く叩いてコンコンと鈍い音がする「下地のある場所」を選ぶか、突っ張り面の上部に当て木を挟んで面圧を分散させる配慮が不可欠です。