BAD HOPの音楽を理解する上で避けて通れないのが、彼らが生まれ育った神奈川県川崎市川崎区という街の存在です。
京浜工業地帯に位置する川崎区南部は、外国人労働者や工場労働者が多く暮らす一方、貧困や治安の悪さが長年問題視されてきたエリアでした。T-PablowとYZERRの生家も決して裕福ではなく、幼少期から家庭環境の崩壊、暴力や非行が日常に溢れる壮絶な日々を過ごしたと語られています。
少年時代、彼らは生き残るためにストリートグループを結成し、時に法を犯し、少年院や鑑別所に入るなど荒れた青春を送っていました。そんな彼らに転機をもたらしたのがヒップホップとの出会いです。アメリカのギャングスタラップに自分たちの境遇を重ね合わせ、「この底辺から抜け出す手段は音楽しかない」と決意。地元・川崎の幼馴染たちを集めて結成されたのが「BAD HOP」でした。
彼らが歌うリリックには、架空のフィクションは一切ありません。工場地帯の曇った空、裏路地での抗争、友人の逮捕、そしてそこから這い上がろうとする強烈な野心。その痛烈なリアリティこそが、同世代の若者たちの心を掴んで離さなかった原動力です。