本作のドラマ性を語る上で欠かせないのが、音楽との深い結びつきです。米米CLUBが歌った主題歌「君がいるだけで」は、オリコンチャートで累計289万枚を超える大ヒットを記録し、今なおJ-POP史に燦然と輝く名曲です。「たとえば 君がいるだけで 心が強くなれること」という歌詞は、劇中の優美子とカンナが互いに向けた想いそのものであり、過酷な現実を生き抜くための救いとして機能していました。
また、本作のタイトル『素顔のままで』は、アメリカの世界的シンガーソングライターであるビリー・ジョエルが1977年に発表した名曲『Just the Way You Are(素顔のままで)』へのリスペクトも深く想起させます。
ビリー・ジョエルの楽曲における有名なフレーズの歌詞和訳を紐解くと、次のようなメッセージが込められています。
「僕を喜ばせようとして、自分を変えようとなんてしないでほしい(Don't go changing, to try and please me)」
「ありのままの君が好きなんだ(I want you just the way you are)」
世間体の良いお見合い結婚から逃げ出し、自分自身の居場所を探していた優美子。そして、親からの愛に飢え、強がることでしか自分を保てなかったカンナ。2人は社会的な肩書きや見栄をすべて剥ぎ取った「素顔のまま」でぶつかり合いました。ビリー・ジョエルの楽曲が歌い上げた「無条件の他者受容」という哲学は、北川悦吏子が本作に込めた主題と見事に共鳴しています。