では、インフルエンザで異常行動がなぜ起きるのか、その理由はどこにあるのでしょうか。最新の神経科学および臨床データは、複数の生体反応が複雑に絡み合っている実態を示しています。
最大の要因は、小児特有の中枢神経系の未熟さにあります。インフルエンザウイルスが体内に侵入すると、免疫システムが過剰に反応し、大量の「炎症性サイトカイン」と呼ばれる生理活性物質を放出します。このサイトカインが血液循環を通じて脳に影響を及ぼし、一時的な神経機能の変調や脳浮腫に近い状態を引き起こすと考えられています。
さらに、体温が急激に39〜40度へと上昇する過程で、脳の視覚・感情を司る領域がパニック状態に陥ります。これにより、目の前に怪物がいるように見える、壁から虫が這い出てくるといった強烈な幻覚が生じ、恐怖のあまり「そこから逃げ出そう」として窓や玄関へ猛ダッシュしてしまうのです。本人の自由意志や性格とは無関係に、脳の機能不全による反射的なパニック反応として発生するのが、小児のインフルエンザにおける異常言動の正体です。