鬼滅の刃全編を通じて最も壮絶な場面の一つが、産屋敷邸において実行された爆死による最後です。宿敵・鬼舞辻無惨がついに自らの手で産屋敷邸の結界を破り現れたその瞬間、耀哉とあまね、そして傍らに控えていた長女・ひなきと次女・にちかは、屋敷に仕掛けられた大量の火薬と撒菱(まきびし)を用いて自爆を敢行しました。
この前代未聞の奇策に至った爆死の理由は、千年生き続けた無惨の底知れない警戒心を完全に解くためでした。無惨ほどの知性と再生力を持つ鬼を足止めするには、相手が「当主を仕留めた」と油断した刹那を突くしかありません。自らの命を餌にし、肉体が吹き飛ぶ苦痛と死をも厭わない罠を仕掛けることで、珠世の薬(人間返しの薬)の注入と、悲鳴嶼行冥をはじめとする柱たちの同時奇襲を成功させる唯一の隙を作り出したのです。
特筆すべきは、娘であるひなきとにちかの同伴です。耀哉とあまねは決して死を強制したわけではなく、娘たち自身の強い意志によって両親の傍らを離れず、共に散る道を選びました。一方で、長男である産屋敷輝利哉(きりや)と、妹のくいな、かなたの3名は事前に安全な別拠点へと避難させ、直ちに第98代当主として最終決戦の指揮を執る体制を整えていました。情愛に溺れることなく、感情と冷徹な戦術を極限まで両立させた、血統の執念が生み出した作戦でした。