「山あり谷あり」と類似した語彙として頻出するのが「波乱万丈(はらんばんじょう)」や「紆余曲折(うよきょくせつ)」です。日常会話では同義語のように混用されがちですが、文章表現や公の場での正確性を期す上では、その構造的な違いを厳密に区別しなければなりません。
最大の違いは、「変化の激しさ(ドラマ性)」と「事態の複雑さ(プロセスの曲折)」のどちらに主眼が置かれているかという点にあります。「波乱万丈」は、一万丈もの大波が逆巻くように事件や劇的な変化が次から次へと押し寄せる過酷な状況を指し、個人の力では制御不能なドラマティックな人生描写に適しています。対照的に「山あり谷あり」は、自然のサイクルとして浮き沈みを俯瞰する静かな視点が保たれています。
なお、他の類語としては「浮沈(ふちん)」「沈浮」「変転」などが挙げられ、対義語には「平々凡々(へいへいぼんぼん)」「平穏無事(へいおんぶじ)」が位置づけられます。自らの歩みを謙虚に語るのか、相手のこれまでの奮戦を称えるのかによって、的確な語句を選び出すことが求められます。