静岡浅間神社の参道として栄える静岡浅間通り商店街。その一角で赤鳥居を背に暖簾を掲げる「おがわ」は、創業から75年以上の歴史を刻む静岡おでんの総本山とも言える老舗です。戦後の混乱期に駄菓子屋としてスタートし、子どもたちのおやつや近隣住民の憩いの場としておでんを提供し始めたことがすべての始まりでした。
おがわの真骨頂は、店内に入った瞬間に視界へ飛び込んでくる大鍋の漆黒に染まった秘伝スープにあります。初めて目にする人はその濃さに圧倒されますが、一口食べれば塩辛さは一切なく、深いコクとまろやかな甘みが口いっぱいに広がります。この味の骨格を成しているのが、毎日丁寧に灰汁を取りながら煮込み続ける国産牛すじの濃厚なエキスと、上質な昆布、そして長年注ぎ足されてきた特製醤油ダレです。
鍋のなかで具材が煮崩れぬよう火加減を細かく調整し、朝から晩まで出汁の旨味を循環させる日々の手入れこそが、家庭では決して再現できない老舗の味を支えています。串に刺さった熱々のおでんを取り出し、イワシやカツオの削り粉である「だし粉」と香ばしい「青のり」を豪快に振りかけて食べる作法は、まさに静岡の食文化そのものを体感する瞬間です。