愚地克巳という武道家の人生を語る上で、避けて通れない最大の分岐点が『範馬刃牙』におけるピクル戦です。ジュラ紀の恐竜を素手で屠ってきた原人ピクルを迎え撃つにあたり、克巳は自らの代名詞であった「マッハ突き」の限界突破に挑みました。
中国拳法の生ける伝説・郭海皇から授かった助言――それは「骨格の関節を無数にイメージする」という脱力と関節解放の極意でした。人間の関節を数千個の連なりとして捉え、脱力から放たれる打撃はついに音速の壁(音壁)を突破。放たれた衝撃波は自らの肉体をも容赦なく削り取る諸刃の剣へと変貌しました。
実戦の舞台において、克巳の放った「当てない打撃」および「真・マッハ突き」はピクルを幾度もダウンさせ、捕食対象ではなく「一人の戦士」として認識させるに至ります。しかし、超音速打撃の反動は凄まじく、克巳の右腕は骨と肉が破裂して消滅。右足も食いちぎられるという凄惨な代償を支払いました。しかし、倒れ伏した克巳に対し、ピクルは勝利を誇ることなく、ひざまずいて祈りを捧げたのです。勝負には敗れたものの、克巳が武の真理に到達した瞬間でした。