手紙に綴られていたのは、鈴羽が1975年にタイムトラベルした後の過酷な生涯でした。手紙の文面には、次のような痛切な告白が残されています。
「こんな人生無意味だった」「あたしは失敗した失敗した失敗した……あんな不完全なタイムマシンで行くべきじゃなかった」「使命を忘れて生きてしまった」「ごめんなさいごめんなさい」
1975年に跳躍した鈴羽は、激しいタイムトラベルの負荷によって記憶喪失(健忘症)を発症していました。自分が未来から来たことも、IBN5100を手に入れる使命すらも忘れ去り、「橋田鈴」という偽名で周囲の人々に支えられながら平穏な人生を送ってしまったのです。
彼女が記憶を取り戻したのは、跳躍から実に25年が経過した2000年のことでした。ミレニアム問題のニュースなどをきっかけに突如として使命を思い出したものの、すでに時遅し。IBN5100の入手機会は完全に失われ、自らの若さと健康も奪われていました。自責の念に押しつぶされた鈴羽は、岡部宛てに狂乱の遺書を残し、首を吊って自ら命を絶つという凄惨な最期を遂げたのです。